鎖骨骨折しなかったら絶対考えなかった、、鎖骨についての知識
もし鎖骨骨折をしていなければ。
鎖骨なんてちょっと襟元の開いた服を着た女性のデコルテあたりを見た時に
「鎖骨のラインがきれいで色っぽい」とか
「鎖骨がくっきり出てシャープな感じ」と思ったり、
多少太っても鎖骨が肉に埋もれないタイプの人や、逆にたいして太っていないのに鎖骨が埋もれているタイプの人をみて
「体質だねー」と思ったり、
リンパ流します系のマッサージに行くと
「鎖骨のくぼみを優しくマッサージして流してください」と言われ
ここには何か悪いものが溜まるのだろうか、、と思ったり、
たぶん一生そんな程度の興味しかなかっただろう。
しかし!
鎖骨骨折し、様々なサイトを読み漁ったり医師や理学療法士に話を聞いた私は知った。
鎖骨は別に「セクシー鎖骨美人」とかささやいてもらうためだけにあるわけではないのだ。
鎖骨が無いと木に登れないしハグもできない
鎖骨がないと動物は木に登れない。
*ここでの「木登り」は、こんな感じに垂直方向にそびえる木に抱きついて登ることを指している。
鎖骨には胸を大きく左右に開く役割があり、鎖骨のおかげで前脚を内側に曲げる=抱きつくという動作ができるらしい。
前脚を胸の前に持ってきて細かな動作ができるのも鎖骨のおかげ。
リスがドングリをかかえて食べているカワイイ姿も鎖骨あるが故である。
もしリスに鎖骨がなかったら、地面に置いたドングリにくらいついて、
「犬食いはお行儀悪いわよ」と叱られてしまうのである。
猫、熊、猿、ネズミなどは鎖骨があるから木に登れるし、やろうと思えばハグもできる。胸が左右に広がるので、ぬいぐるみもお座りしている形状のものが多いのも納得だ。
キャラクターだってキティちゃん、プーさん、くまモン、ひこにゃん、ピカチュウに、みんな大好き「あのネズミ」も。
直立歩行して(キティちゃんは座ってるけど)胸を開いているが、違和感なし。
トムとジェリーが2足歩行で仲良く喧嘩しているのも自然な風景だ。
犬、ウサギ、象、馬、には鎖骨がないから木に登れないし、ぬいぐるみには四つ足状態のものが多いように思う。
世界的キャラクター、スヌーピーやミッフィの胸を張った姿には
「無理してます感」
「本当はこんな風に胸張って立てない悲壮感」
が漂っていると思うのは私だけだろうか。鎖骨がないため本来できるはずのない姿で立たされているから、あんな苦し気な無表情になっているのではなかろうか。
ひそかに愛している愛媛県のゆるキャラ「みきゃん」を初めて見た時に、「熊?」と私が勘違いしてしまったのも道理である。
そう、しゃきーんと直立歩行しているから犬に見えなかったのだ。
だって犬には鎖骨がないから。
そして鎖骨があればハグだってできる。
金太郎が熊と相撲がとれるのも納得である。
鎖骨は折れやすく、つき易い
鎖骨は人体の中で一番折れやすい骨だと言われているらしい。
肩に加わる衝撃を吸収したり、他のもっと人体にとって大切な(命に係わる)骨や内臓を守るために先に壊れるという役割を持っているのではないかという説がある。
なんて泣かせる、、、
なんて健気な骨なのだろう。
また、保存療法でも比較的治癒しやすく、たとえ変形してしまっても治癒さえすれば大きな問題にはならないという特徴があるようだ。
もちろん保存療法のデメリットとしてあげたように、左右の長さが異なる状態で治癒するという美的には厳しい、という問題はある。
そういえば、私が骨折して手術療法を選び、保存療法のデメリットについて両親に説明した時に父がふとつぶやいた。
「そうか。お父さん、骨折して左側だけ変形してたんやな。」
父は若い頃柔道をやっていたのだが、肩あたりを激しく痛めたことがあったらしい。
おそらく若木骨折だったのだろう、骨折とは気づかぬまま放置して変形したまま治癒してしまったと思われる。
その後ジャケットやスーツを買うたびに、いつも左右のバランスが悪いなあと思い続けて数十年。。。
謎が解けた瞬間であった。
肩から落ちて鎖骨を折ろう
競馬の騎手や競輪の選手がまず習うこと。
「落ちるときは肩から落ちろ」だそうである。
決して頭や肘、手首をつくような形で落ちてはならない。
肩から落ちて鎖骨を折るのだ。
頭はもちろん最重要で守らなければならないし、肘や手首は複雑骨折することが多く、下手すると再起不能になって選手生命を絶たれてしまう可能性があるらしい。
その点鎖骨は治癒しやすく、変形したとしても大問題になることは少ないから。
鎖骨を折って最速復帰をめざす。
なるほど。
スポーツ選手でもなんでもないけど、私も肩から落ちて運がよかった。
もし、手首をついてこけていたらもっと大惨事になっていたのかもしれない。
確かに手首を骨折していたら、日常生活に想像を絶する不自由があっただろうし、おそらく長期間に及んだと思う。
鎖骨骨折は直後のいくつかの困難を乗り切って手術さえ無事に終われば、その後はストラップをかけられないこと以外、本当に通常通りの日常生活を営めた。
人によればストラップをかけるのもへっちゃらな場合もあるだろう。
自らを犠牲にして他の繊細な部分を守ってくれた鎖骨に感謝。
すぐに折れちゃうという一見弱いように見えて本当はとっても強い子だ。
これから更に老朽化する体を抱え、もちろん二度と骨折するつもりはないけれど、
万が一…
万が一…
自転車から落ちそうになったり、スキーで大こけしそうになったら、迷わず肩から落ちて鎖骨を折ろうと思う。